70年代まで、日本は穀物による世界の自給自足地域を代表していたが、
同時に稲作にトラクターを利用する工業先進国でもあった。
現在、穀倉地帯は実りの秋を終えたが、
喜びに満ちた収穫祭はどこにも見られない。
米は作れば作るほど、トラクター、肥料そして農薬などの経費が
利潤を越えるシステムに支配されているからだ。
トラクター、肥料そして農薬は、ヨーロッパやロシア、
そしてアメリカの小麦生産立国のための効果的な道具としてデザインされた。
冷戦の脅威に耐えるには、
穀物の備蓄量を優先的に維持しなければならなかった。
戦後の次世代の農業従事者を効果的に教育するプログラムは、
機械化農法のモデルに代表される<名犬ラッシー>という TV映像として輸入された。
すでに高価なテレビを買った人々は、毎回登場する大きな冷蔵庫から
いつも新鮮な牛乳を取り出すシーンにあこがれ、
冷蔵庫と、脱脂粉乳ではないビン入りの牛乳を買い求めたのである。
そして、高価な冷蔵庫を買った人たちは、高価なパンを食べ始めた。
<一粒万倍>を稲作地帯から排除する計画は、静かに進行していたのである。
それは確実に日本の生態系と水耕経済を破壊した。
アジアの水耕経済の原型モデルとは、イネを作れば作るほど、余剰物は増加し、
結果的に水が浄化される循環型のエコロジー経済である。
アメリカの支配を防御した北ベトナムでは、水耕経済の原型は完全に生き残っている。
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