日別アーカイブ: 2005年11月17日

詩人の忠告

陰鬱な時代を生きると感じる詩人ではない若い人は、
カミングズの「詩人の忠告」のとおり簡単なことを始めた。
世界は至る所で爆破されている。
真に感じるということが試されている時代を生き延びている。

 詩人の忠告                e・e・カミングズ

 詩人とは、物を感じる人であり、言葉を通してその感じを表現する人である。
 これは、簡単に聞こえるかもしれないが、実はそうではない。
 多くの人が、感じるということを考えあるいは信じ、あるいは知る。しかし、それは考えたり、信じたり、知ることであって、感じることではない。そして、詩は感じることである。つまり知ったり、信じたり、あるいは考えたりすることではない。
 誰でもたいていの人は、考えること、信じること、知ることを学べるが、誰一人として感じることを教わることはできない。なぜか?それは、あなたは考えたり、信じたり、知るときはいつもほかの多くの人たちと同じだが、感じる瞬間というのは、あなた以外の何者でもないからである。
 あなたを他人と同じ人間にしてしまうために、昼夜を問わずありとあらゆることがなされている世界にあって、自分以外の何者でもない存在でいようとすることは、その気さえあれば誰にでもできるもっとも困難な戦いをすることを意味している。それは決して終わりのない戦いである。
 自分以外の何者でもない存在でいることを言葉によって表現すること、それは詩人ではない人に想像できるより、少しだけ努力しなければならないことでもある。なぜか? 誰かほかの人がやっているように言葉を使うほど簡単なことではないからだ。われわれは皆、ほとんどいつも互いに似てしまう。そして、われわれがそうするときはいつでも、詩人ではないのだ。
 あなたが格闘し努力し、そして感じる最初の10年か15年をへてついに、もし一篇の詩の一行が書けていたら、あなたは実にきわめて幸運ということになる。
 そこで、詩人になりたいと思っているすべての若者たちへの私の助言は、もしあなたが死ぬまで感じつづけ、戦うよう努力する意志ばかりでなく、そこに喜びがないのなら、世界を爆破する方法を学ぶといったような、何か簡単なことをすべきである。
  これは陰鬱に聞こえるだろうか? 否、そうではない。
それはこの世でもっともすばらしい人生だ。
 つまり、私はそう感じている。 

 『クリティカル・パス』p.14 バックミンスター・フラー著 白揚社1998 

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