頻度の高い乱気流に耐える航空機の構造計算を設計者が無視した場合、墜落というリスクから罰則がなくても科学的な<耐震強度>をけっして偽造できなくなっている。
しかし、耐震基準を満たさない状態の建築が施行できるのは、第2次世界大戦後の構造物が人間の寿命からみれば頻度が高くなった大地震に対して十分に適応していない国家の建築構造物の許認可制度という法律が、<耐震強度>を規定してきたからにほかならない。
死の確率の薄い人工物のデザインの革新は、常に緩やかで曖昧である。
言い換えれば、航空機では飛行のテクノロジーが基準を自主的に作り出すが、建築では大地に根ざした不動のテクノロジーや土地資本主義が、構造デザインを停滞させ死の危険性を許容してきたのである。
今後10年間の大地震が引き起こす構造物の倒壊による死亡率の予測が、航空機事故による死亡率よりも遥かに高い場合、建築のテクノロジーは短期間に変貌するだろう。
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