グルテンは小麦にしか存在しない蛋白質の1種で、麺の「こし」であったり、
パンの骨格を担っていると考えられてきた。
しかし、これは間違いである。
こしや骨格は圧縮に関する概念を含んでいる。
「こし」とは容易に折れたりしないで、元の状態を保とうとする力であり、
練り上げた物のねばり、板・棒などの弾力などを意味する。
こうした靭(じん)性は金属にもあるが、
グルテンはグルテニンとグリアジンがから形成され、
弱い結合(水素結合・疎水結合)のため形を変えることができ、
パン生地のような柔らかいが固まった状態になる。
酵母の発酵によって炭酸ガスを保持する機能がある以上、
パンの生地中の気体は圧縮材として機能しているのである。
パンにはもっとも張力が強く発生する強力粉が使用される。
うどんの場合は、グルテンによって連続的で立体的な網目構造の
張力構造体が形成されている中にでん粉粒が存在していることになる。
でん粉粒自体が結晶性を示しているので、
このでん粉粒が圧縮を受けているのである。
引っ張り強度を最大にするこねる工程は、
うどんの「こし」を決定すると言われているが、意外にも5分以内である。
「こし」のあるうどんは柔軟な張力構造体を意味している。
グルテンは張力の機能を担っている。
「こし」の正体は骨格ではなく、張力のことである。
固体的な石の歴史はわれわれの食感にも及んでいる。 Y.K