カレーのルーではなく、
カレー粉からカレーを最初に作ったのは、
小学3年生の時だ。
小さなカレー粉の缶に印刷されたレシピにある材料を切りそろえ、
必要な香辛料やオイルなどを同時に鍋で煮込んでいった。
レシピの手順をまったく無視しても、
味は同じと考えていた。
この合理化は見事に失敗した。
次の日、手順通りに従った結果とを比較する実験を思いついた。
その結果のあまりの違いから、レシピを尊重する習慣が生まれた。
レシピは秘法の集積かもしれない。
料理は見えない生化学反応の連続だ。
知識もまた同じである。
相互作用する順序やタイミングを無視すると、
かなりまずい結果になるだろう。
知識も複雑な生化学反応をする。
レシピ(recipe)とはreceiveであり、受け取ることである。
しかし、思考とは受け入れることではない以上、
思考のレシピは、存在しない。
思考の自発的な生化学反応は、個人の経験から生まれる。