有機体生命以外で、
もっとも単純な動的平衡状態を観察したければ、
テンセグリティモデルが一つあれば十分だ。
しかし、
圧縮力と張力という互いに非鏡像的で反対称的な流れは、
テンセグリティモデルの振動以上に観測することができない。
互いに非連続な圧縮材と連続した張力材と物理的な動的平衡は
シナジーの概念によってのみ説明できるだろう。
テンセグリティ構造の概念のアナロジーは、
テンセグリティの発見以前には存在しなかった。
実際、1911年ラザフォードは原子核を発見したが、
テンセグリティ構造の発見者ではなかった。
トムソンによる電子の発見(1897)から陽子・中性子の発見まで
原子核構造の概念形成に14年間の懐胎期間があるように、
原子核を発見から球状テンセグリティ構造の発見まで、
38年間の懐胎期間が存在する。
さらに、細胞がテンセグリティ構造であると認識されるまでには
球状テンセグリティ構造の発見から約半世紀を必要としている。
原子核構造と同じように、
球状テンセグリティ構造と細胞テンセグリティ構造は
電子顕微鏡という人間の視覚の拡張装置ではなく
概念によって、視覚化されてきたのである。