蜘蛛の糸と同じ直径からなる繊維を、
鉄と炭素からそれぞれ構成した場合、
もっとも引張力の小さな繊維は、
蜘蛛が紡ぎ出す繊維ではなく鉄の繊維である。
炭素繊維は鉄の10倍である。
蜘蛛が自発的に撚った繊維は鉄の5倍となる。
この引張強度のもっとも高い炭素繊維(カーボンファイバー)を
機体の大部分に利用する軽量の旅客機に使用するには、
炭素を繊維状に成形してから炭素の含有量を高くするために、
特別な装置で300℃の高温・高圧状態にしなければならない。
常温・常圧でハイテク繊維工場を内部化(=内蔵化)した蜘蛛は、
引張力の再現において、もっとも省エネであり、
しかも二酸化炭素の排出量は、最小限であるばかりか、
化石燃料にいっさい依存していない。
蜘蛛から見れば、
常温・常圧でさえバイオスフィアが
準備してくれた偉大な空気膜のテクノロジーである。