月別アーカイブ: 2018年7月

森と微生物の貯水機能

砂防ダムは流木や巨石を受け止める目的だけで貯水機能はない。
1時間あたり100ミリを超える雨量で大量の流木が発生する時
小さな河川の無数の砂防ダムは貯水機能を形成する。
流木から深刻なダムの決壊を防ぐ基本的解決策は土木工学ではない。
広葉樹の森(枯葉)と微生物は大量の水資源を確保できる。

砂防ダム 小さな河川に階段状に多数設ける

小学館 日本大百科全書

表層エコロジー

流失した家屋や車両、そして大破したインフラの復旧とは、
破壊される前の状態に戻すことである。
大量の土石が山林の表層流失ならば、
これらの土石は海底や川底の表面への堆積物となる。
海や川の表層エコロジーは復旧には含まれない。
人間は表層エコロジーを形成するバイオマスの一部だ。

選択的な排除

家屋や橋脚、そして堤防を破壊したのは土石流だけではない。
浮力のある圧倒的な流木群が破壊力を加速している。
その大半は針葉樹の太い長い幹の集合体である。
気象変動期の自然は、人間の有用性で形成された針葉樹森を
選択的に排除している。
この大規模な排除までに70年の歳月を準備した。

浮力のある圧倒的な流木群の破壊力

床下浸水しない船

アジアの農村地帯のほとんどの高床式家屋は、
堤防のない河川流域に建造される。
高床式家屋は床下浸水がない船という概念でデザインされてきた。
浮遊する筏付きの高床式家屋も存在する。
洪水時には水が引くまでデッキから釣りができる。
子どもたちは学校がない日々を楽しみにしている。

アジアの農村地帯

高床式Small House

気象変動に備えてSmall Houseも高床式になるだろう。
土地と一緒に家を買う習慣から離脱できるサバイバルのための
モバイル用の軽量化されたSmall Houseは
剛性の高いオクテットトラスが最適である。
床下浸水や豪雪に耐え、床下収納機能も兼ねる。

SYNERGETICS RBF 2018 Octet Truss

床下浸水は当たり前

東南アジアでは床下浸水は当たり前だとする伝統的な住宅デザインがある。
洪水と湿度と昆虫から遠ざかる縄文の高床構造や弥生からの米倉構造は
河川工事よりも地勢的に安定している。柱は水に強い栗木。

縄文の高床構造は米倉構造に継承されるSmall House

自然の地勢(topography)

今回浸水した場所や水没した流域はその記憶がある場所とは限らない。
人工の針葉樹林が地表水の分水嶺に影響を与え気象にも影響を与えている。
分水嶺をコントロールする自然の地勢(topography)はデザインできない。
地勢は自然の知性だ。

「川だけ地図」を見る限り、日本のダムは静脈瘤にちかい。
All Rivers – Ground Interface
http://www.gridscapes.net/AllRivers/#5/33.980/138.494

インフレ−タブル・カヤック

バイオスフィアの予告なき水圏の拡張に備えて
軒下やマンションのベランダには
ポンプ付きカヤックとテントを常備しなくてはならないだろう。
気候の変動期に、水・陸のモバイル機能はもはやオプションではない。
自然は隠れた水脈を船の水路として絶えず再生する。
それらは水面下の土地資本主義には無用だ。

驚異的な軽さとコンパクト性を誇るカヤック
艇内に侵入した水を自動で排水する機能付き

複製されない「スピルカ」

日本初の乳酸菌飲料カルピスは馬乳酒中の酵母による独自性を
維持するために、ヨーグルトなどと違って
複製されないように完全に殺菌されている。
しかし、子ども頃のカルピスの方が遙かに美味しかった。
脱脂粉乳と砂糖が原料だが、
雪花菜(おから)から作られるオリゴ糖が入っていなかったからか。
変わったのはパッケージだけではない。
脱脂粉乳もおからも先進工業国では産業廃棄物だ。

カルピスの変遷 

水たまりを複合発酵させる

細かすぎるコーヒー豆でドリップするとフィルターが目詰まりするように、
土質粒子が細かく窪んだ場所が
降雨で土質粒子が一時的に飽和状態に達するとすぐに水たまりとなる。
この水たまりを酵素で複合発酵させると浸透性が短時間に高まる。
互いに異なる微生物群が隙間を形成するからだ。
道や畑などの水たまりは土木工事で水平に改善する必要性はない。

M.C.Escher