テンセグリティを理解することは
美しいテンセグリティを複製するよりもはるかに困難である。
テンセグリティ原理の発見よりも前に
テンセグリティモデルは存在しなかったからだ。
テンセグリティの構造とパターンの発見は
重力(つまり自重)を利用したすべての構造の解体の結果であり
構造とパターンに美を求めた結果ではない。
SYNERGETICS RBF 1975
「美、真実、対称性、自己との相互関係は、正四面体を構成する」
テンセグリティを理解することは
美しいテンセグリティを複製するよりもはるかに困難である。
テンセグリティ原理の発見よりも前に
テンセグリティモデルは存在しなかったからだ。
テンセグリティの構造とパターンの発見は
重力(つまり自重)を利用したすべての構造の解体の結果であり
構造とパターンに美を求めた結果ではない。
SYNERGETICS RBF 1975
「美、真実、対称性、自己との相互関係は、正四面体を構成する」
私が最晩年のバックミンスター・フラー研究所で最初に見たテンセグリティモデルは、どれも輝いていた。木製の丸棒と釣糸といったありふれた単純な素材から構成されたテンセグリティは、バックミンスター・フラー研究所のどの部屋の壁にも、シナジェティクスの分類名と共に展示してあった。素材を超えた純粋なパターンが連続的な対称性の変容と共に相互変換(トランスフォーメーション)するプロセスは時間を含む動力学的な世界像そのものであった。
ベクトル平衡体の相互変換と同じくシナジェティクスのシンメトリーに対する新しいビジョンを視覚化していた。
私の最初のテンセグリティの制作方法に独自性があるかどうかをフラーに質問したことがある。その方法とは、球系多面体の各頂点をタービングさせて複数の頂点に分離し、連続的な対称性の変容の中から2つを選んで一方をテンセグリティに、他方をそのテンセグリティを作り出すためのジグにする方法であり、非共鳴型テンセグリティから共鳴型テンセグリティを生む出す方法であった。(この方法から私は後に特許権を取得した。)
テンセグリティのパイオニアであった彼は、私の試みの有効性を即座に認めたが同時に、異なった方法による彼の先行事例を紹介してくれた。彼はシナジェティクスやデザインサイエンスの講義や講演にいつも自らデザインしたテンセグリティモデルを持参していた。航空機での頻繁な移動には不向きなその直径50センチの木製の球状モデルには、折りたたむ機能が付加されていた。彼は講義や講演の始まる前には、いっさい原稿を用意しない代わりに控室で一人でしばらく瞑想する習慣があったが、テンセグリティモデルはその瞑想する彼の傍で単独で即座に組み立てられるようにデザインされていた。30本の圧縮材からなる球状テンセグリティは5分以内に組み立てられた。
私がフラーに会う前に、日本で最初に見たテンセグリティは、バックミンスター・フラーと共にある幾何学・図学者の多面体と建築との関係を解説した書籍で紹介されていたが、そのモデルは、張力部材を代用してピアノ線や針金のような直径の不釣り合いな直線材を明らかに使用していた。その直線材の両端は鋭角に曲げられ金属パイプの端部へと差し込まれていた。テンセグリティの形態だけを模倣したこの固体的モデルからは、テンセグリティのもっとも重要な機能は表面的なトリックと共に消えていた。圧縮力を受ける直線材は張力材の代替にはならない。張力による「統合作用」が「シナジェティクス=思考する幾何学」の最重要モデルからすっかり消えていたのである。インターネットのない時代にはこのような重大なミスインフォメーションは歴然と頻繁に横行し、研究者はしばしばタイムラグを利用した概念の悪質な輸入代理業を兼ねていたにちがいない。
私は、社会に属したままで、テンセグリティモデルを作成すると繊細さによる統合作用が未経験なので、そのモデルは実際には共鳴現象をほとんど引き起こさないというおそろしく単純な制約、それゆえに目の前の現実の出来事を認めるまでには至らないという事実に注目した。この操作主義的な観点はこの30年以上の空白を説明するには有効に思える。
名声や評判、地位を得るための社会に属しているかぎり、科学性を目指したとしても、共鳴テンセグリティモデルが観察者の手の中で再現されることはありえないという作業仮説に達した。
当時のノウハウや次世代のテーマは、目新しいビジネスのために表面的に模倣されることはあっても、デザインサイエンス革命のためには,つまりは人類の基本的な住居のためにはまったく共有されなかった。皮膜を取り付ける試みよりも基本的な構造とパターンを圧縮材と張力材に変換する作業でさえ、バックミンスター・フラーの1950年代の再現以上ではなかったばかりか、世界中の科学者や工学者、デザイナーや工芸家によってさえ、その張力によってもっとも調和し輝きに満ちた80年代初頭のフラー研究所のテンセグリティモデルの「美しさの段階」が再現されることはなかった。
それは主に存在の軽い張力と張力材に対する偏見からであった。
われわれはまだ圧倒的な圧縮材と圧縮力に囲まれて生きている。思考力も思考のパターンも圧縮力的である。様々な耐荷重のなかで生存しているにすぎない。不連続な個々の単独者は、他のすべての単独者との純粋な対話を経験しないばかりか、経験するための動機と目的がすでに奪われている。
だれでも最初に模倣から制作されるテンセグリティモデルは、それを作成する制作者の自己の内部の心的状態を外部に投影した段階にすぎない。
しかし、心からすべての社会的規範を否定すれば、そのとき初めて統合力に包まれたテンセグリティの純粋さが現れるだろう。自己の中にテンセグリティ的調和がなければテンセグリティが構成できないという単純さこそ、物質の純粋な結合方法を認識する最短で最良の方法になるだろう。
この作業仮説が正しければ、腐敗した社会的思考から逃れられる新たな思考方法の探査にもなるだろう。
テンセグリティ的調和とは自己の内部と自己以外の外部との相互変換に他ならない。
真のシステムにはもっとも重要な部分は存在しない。
テンセグリティの張力とは、重力の現れである。
その重力なくして、距離を隔てた異なった存在を互いに統合する力は存在しない。
重力とは断面積がゼロの、この銀河系宇宙ではもっともありふれた重さのない張力材である。
しかし、有限な宇宙は有限な経験に基づいて、その張力材は「経験する私」を除いて球状のテンセグリティ・ネットワークを形成しないのである。
無生物における「動的均衡」、それ自体が相互に無段階的に変容する。
そのどの段階にも共鳴作用を伴い、圧縮材はつねに互いに非接触なのである。
2020年5月01日
シナジェティクス研究所
梶川 泰司
1.
異なる経験から、観察する主体と観察される対象(他者性)との間には、タイムラグが生じる。
2.
フラーレンは古代の隕石の中にも存在し続けていた。
実際、フラーレンが発見された後に、隕石の内部を観察する過程で隕石から無数のフラーレンが発見された。
C60フラーレンは直径わずか10億分の1メートルだが宇宙でこれよりも大きい分子はまだ発見されていない。
3.
ジオでシック構造、またはテンセグリティ構造がなければ、フラーレンは発見されなかったかも知れない。
4.
概念モデルが発見されない限り、自然は観察できない。
5.
テンセグリティ原理の認識とテンセグリティモデルの制作との間には、最大級のタイムラグがある。
https://synergetics.jp/tensegrityblog/
https://synergetics.jp/workshop/ws200516.html
夜空も星々の「タイムラグ」で満たされている。
この無数のタイムラグは、宇宙の秩序を形成している。
テンセグリティの共鳴作用は、
断続的な外力と内部の分散機能との「タイムラグ」の統合から生まれる。
短命な微風からでさえ、テンセグリティは自らの固有振動数に目覚める。
「遠隔テンセグリティ・ワークショップ2020」
講師 シナジェティクス研究所 梶川 泰司
⭐︎申込はこちらから
https://synergetics.jp/tensegrityblog/
https://synergetics.jp/workshop/ws200516.html
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