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風と球面張力波

電磁気学的な波は全方法的に拡散する。
結晶構造と準結晶構造は全方向的に成長する。
球面張力波は全方向的に干渉する。
それらはつねに非同時的である。

共鳴テンセグリティ構造は、
非同時的な外力を固有振動数に同期させる。
さざ波のように絶えず押し寄せる球面張力波を
固有振動数に変換し
嵐で可視化される共振作用は半径の極めてスローな増減になる。

風による球面張力波のエネルギーが
3Way-Grid構造を共振回路に変容させる時、
テンセグリティシェルターは
風と共鳴することで自らをより非物質化しようとする。

SYNERGETICS RBF
Fig. 765.02 Stabilization of Three-Way-Grid Tensegrity Sphere;

表面張力(surface tension)

春の嵐は台風よりも強風を伴う。
強風によるフラッタリングの発生がない
テンセグリティシェルターの機能を
構造の柔軟な強度だけでは説明できない。

外力を受けたシェルターの表面を覆うフィルムは
テンセグリティの張力の共鳴作用によって
全方向に対して分散すると同時に
表面張力がフィルムの復元力として機能し始めるのだ。
表面をできるだけ小さく維持するテンセグリティシェルターは
表面張力波の干渉を短時間に減衰させる機能を内部からも観察できる。
強風によるフラッタリングの発生がないので
フィルムの耐久性は向上する。

形態は構造ではない

船は大波で揺らぐ。
航空機は乱気流で揺らぐ。
嵐で軋む住宅は振動には不向きだ。
エアロダイナミクスとは無縁な形態は
建築の世界では自己表現の手段になる。
形態は構造ではない。

大きな栗の木のある畑の傍で、
春嵐の中でその太い枝よりもスローに揺らいでいられるのは
嵐に共鳴するテンセグリティシェルターだけだ。
畑に係留するだけで収穫までしばらく停泊できる。

選ばれなかった自由

誰にも車やPCを選ぶ自由がある。
しかし、21世紀になっても
住居に関しては経済的な理由から
選ばれなかった自由の方が圧倒的に優勢だ。

さらに、住居を選ぶ自由はインフラで制限されてきたが、
テンセグリティシェルターは
もっとも経済的に、健康的に、
そして望むならば、
移動しながら住む自由の中に選ばれるだろう。

春の嵐

止むことがない外力と衝突する前に、
外力を受容し、
非同時的に外力分散するシステムは、
けっして劣化しない。

過剰な外部エネルギーから過ぎ去るために内部は
外部エネルギーによって全方向に秩序化されるのである。
システムは、より組織するために部分を絶えず再生する。

テンセグリティシェルターは
瞬間風速30メートルの春の嵐を待ち伏せる。

住宅の壁は、構造の一部である。
外敵からの攻撃やプライバシーの保護のために
その壁は、つねに不透明である。

建築構造では、
この防御壁は不可欠な構成要素であるが、
壁は、無知と恐れが物質化したのである。

植物の茂みが内部空間を分割するシェルターに防御壁は不要だ。
シェルターを覆うフィルムは、
内部と外部の境界面、そしてテンセグリティの張力面としてのみ機能する。

平均律テンセグリティ

平均律は1オクターヴなどの音程を均等な周波数比で分割した音律である。
バッハの「平均律クラヴィーア」は、鍵盤楽器がどのような曲でも演奏できるように
「良く調整された(well-tempered)」音階から構成されている。

吊り下げられたあるいは机上の静止したテンセグリティの張力材は、均等な周波数を保てない。
軽量構造といえども、重力の影響を受容し、その自重による形状の変形から逃れるために
張力材は「良く調整された(well-tempered)」音階から構成されている。

共鳴テンセグリティは、
共鳴するためのより調整された張力をつねに求めている。

机上のテンセグリティ

テンセグリティにおいて、まったく静的な状態は存在しない。
識別できない、または認識できないほどの秩序が物質化されている。
シナジー作用は、つねに動的で不可視であるが、それ故に、
落下できない、あるいは落下させない机上のテンセグリティは
例外的な人工物である。
宇宙の原理は、どんな美的な対象化からも
素速くすり抜けるだろう。

破断実験

テンセグリティは、
その張力材が部分的に破断しても
動揺するのではなく、
振動数の調整によって、新たな秩序に組み替える。

自然は、自らの決定にけっして動揺しない。
膨大な秩序によって、自然には破断がない。

破断実験は人間の想像力の限界から絶えず繰り返される。

テンセグリティの定義

構造という定義の範囲内で、
テンセグリティについて考えることが
テンセグリティを変えると考えていたかもしれない。

テンセグリティは、
その定義を思慮深く
より機敏に鋭くすることによって
構造の定義を変える。

テンセグリティの定義は
テンセグリティを変えない。