テンセグリティ」カテゴリーアーカイブ

デザイン戦略

高速で移動する自動車や飛行機が移動の手段として
船のように素朴に見えるまで
自動車や飛行機は利用されなかったように、
テンセグリティが人間の生存手段のためのモバイル構造として
もっとも単純にそして素朴に見えるまで
すべての機能を再現したテンセグリティモデルを
繰り返し制作しなければ
テンセグリティシェルターがデザインできないのは
デザインサイエンスの独自の戦略ではなく、自然の戦略なのだ。
その時に再び自然は
テンセグリティの新たな構造原理の物質化へと導くに違いない。

構造とパターン

理想的な構造とパターンをデザインしている人たちは
存在できない非現実をデザインしているにすぎない。
しばしば自然とは無縁であり続けるがゆえに
人間の理想は生きながらえる。
この半世紀間、テンセグリティ以上の構造とパターンを
発見できなかったのは科学的現実である。

シナジーの度合い

テンセグリティモデルを構成するストラットやストリングの種類が変われば
「張力」と「張り上がりの硬さ」の相互関係が変化する。
「張り上がった硬さ」でテンセグリティモデルの
シナジーの度合いが決定されるが
「張力」はテンセグリティモデルの硬さの数値にはならない。
なぜなら、張りの硬さは張力が形成するという概念的な誤解と
それに基づく間違ったデザインがあるからだ。
例えば、テンセグリティの張力調整のための重いターンバックルは
シナジー度合いを深刻なほど破壊している。
さらに、例えばストラットという圧縮材に、圧縮力だけではなく
ベンディング(曲げ応力)が発生している。
テンセグリティのストラットの細長比は
テンセグリティモデルの「張り上がった硬さ」という
シナジーの度合いを変化させている数値である。

複製の時代

どんな建造物にも大きさの限界があるのは
大きさと重量の関係に限界があるからである。
実際、人々は小さな建物の倒壊でも亡くなっている。
テンセグリティ構造の複数の張力材が破断すれば
その構造は短時間に致命的な破壊に陥ると考えているのは
建築家だけではない。
テンセグリティモデルを複製した人々でさえ、そう考えている。
ミスインフォーメーションはもっとも複製されやすい。
自然に失敗は存在しないことを、理解するためのモデル言語は
シナジェティクス・モデリングのプロセスに潜んでいる。
テンセグリティ構造体の直径は
現代の素材によってほぼ無限大となる。

触覚

生きるための重要な判断は
触覚に委ねられている。
直接モノに触れる感覚器からの情報に依存している。
モノに触ることから
思案しはじめる傾向が生まれる。
そして価値を判断するために
どんなモノ(自動車やパソコン、そして不動産など)に対しても
手で触れるという無意識の行為を引き起こしている
にもかかわらず
触覚に依存した判断結果は
信頼するに乏しい。

続)テンセグリティのユーザ

有用さ(=utility)は
目的ではなく、人間の知性の変遷過程なのだ。
メタフィジックスなくして
宇宙の知性を真の有用さに変換できない。
太陽系から細胞まで
すべての構造はテンセグリティである。
無生物にも有機体生命にも、
テンセグリティのユーザの境界線はなかったのである。

テンセグリティのユーザ

テンセグリティを知り
テンセグリティモデルを学ぶと
テクノロジーへの応用を考えるはじめる人がいる。
例えば、ロボットや構造物などへ。
あるいは人体の骨格と筋肉の関係を
テンセグリティ構造に置換する人がいる。
理解するために
抽象性を具体性に変換できる知性を優位にしたいだけである。
これらはすべて具体性に置き換えて有用性(=utility)を引き出す
頭脳の条件反射なのだ。
テンセグリティは、それ自体が
張力と圧縮力との相補的な原理を応用した
テクノロジーである。
人間がテクノロジーを独自に考え出すことなどないのだ。

『コズモグラフィー』

真実をのぞき込む時
深淵に引きづり込まれるように
モデル言語を発見する時
シナジェティクスとデザインサイエンスの
絶えざる相互作用に魅了されるのだ。
『コズモグラフィー』バックミンスター・フラー 著
梶川泰司 訳(白揚社 2007)は
その動的な過程が記述された最初の書物である。

未知なる構造とパターン

梅雨の満月は
大気中の水分のために
すこし大きく見える。
雲間を素速く移動する満月はとても幻想的だ。
洞窟からみる満月から
テンセグリティ内部からみる満月まで
350万年以上も経過しなければならなかった。
真に未知なる構造とパターンは
複数の人が同時に再現できない。

動的な静寂

自然の非物質化のテクノロジーを
再現する時には
張力とその調整が深く関わっている。
テンセグリティシェルター内部での
瞑想はもっとも静寂と共鳴しやすい。
動的な静寂さは
自律しているシステムの共鳴方法である。
テンセグリティは
大地と社会に依存しない自律空間を生成する。