地球は内部に核分裂の原子炉を持っている。
ウラン以外の金属資源は、一度使用しても回収・再利用できる。
だから、地球を構成する重い元素による核分裂反応は地球のコアに移動したのである。
地球誕生時に既に構成物として存在した始原核分裂生成物(核種)と、
重い核種の自発核分裂反応と中性子誘起の核分裂反応により生成した核種がある。
これらの天然核種とは別に、第2次世界戦争から始まった
人類の原子核構造破壊活動(=間違って太陽系内の平和利用と言われている)
により新たに追加された人工の核種がある。
人工の核種はすべて地球表面で増加している。
これは宇宙のテクノロジー(=資源の偏在化)に反している。
「ヒロシマノート」カテゴリーアーカイブ
責任
巨大プロジェクトに従事させる開発者に
プロジェクトに見合った責任をもたせないのは、
知性が低下するからである。
政治家が兵器の製造や購入の権限を軍部の専門家に委譲したのは、
政治家もまた責任よりも知性を重んじたからである。
あらゆる兵器はこうして開発されている。 Y.K
絶縁
昨年畑の中で発見されたジョジョはついに
去勢手術をすることになった。
そして、手術時の血液検査で猫エイズに感染していることがわかった。
セックスで感染するのは病気だけではない。
種族維持への欲望だ。
温暖化対策で燃料電池の実用化を意図的に遅延させて
ついに原子力発電を全面的に肯定したように、
人間のこの欲望が、宇宙的存在とは絶縁している可能性がある。
増えも減りもしない宇宙のエネルギーを
つねに独占したがる種は存続できないだろう。 Y.K
一枚のネガフィルム
父のデジタル写真技術の習得期間は3年余りを要したが、
その間、スキャナーの高精細化、顔料・染料に関する
黒インクの改善など目覚ましいものがあり、
原爆ドームの一枚のモノクロ・ネガフィルムに託した
半世紀前の彼の記憶は鮮やかに蘇ったのである。
彼は暗室不要のテクノロジーを確信できた。
そして今、残りの2万枚のネガフィルムから第2作目に挑戦しようとしている。
学習に年齢は存在しない。
社会が人間の能力の限界に関する様々な概念をつくり出している。 Y.K
誕生日
88歳の父の誕生日は、デジタル写真の最終仕上げのため
彼の明室(Loght Room)にいた。
銀塩写真の等価物はG5でも動きづらい。
半世紀前の原爆ドームのスキャン画像はついに200Mを超えた。
それにマウスからペン型タブレットに変えたので、慣れるまで余裕がない。
いつもの明室からのスカイプ会議は中止だ。
その帰り、霧がかった夜の中国山脈のドライブで
危うく何度も衝突しかけたのは、
ぶきっちょな狸が3匹、
かわいらしい野ウサギ2匹、
流線型のアライグマ1匹、
そして
3つの流星。
私は家を出てから初めて彼の誕生日を一緒に過ごした。
みんな写真展に招待しよう。
宵の金星が山の端から見える頃、
やっと井戸水を湧かしたお風呂に入っていた。 Y.K
最後の帝国
昨日の午後は 父のアトリエの<明室(Light Room)>に閉じこもっていたが、
新バージョンをダウンロードする間、
アトリエの位置をグーグルマップで確認していた。
このアングルは風景写真家を自負する父には
まったく馴染みながない。
彼は、衛星からの視野が、超望遠レンズと超広角レンズの
対立する2つの機能を備えていることにいち早く注目していた。
しかし、人間の視野角でも超広角レンズでも
一つの球面を同時にとらえることはできない。
これは球の直径とは無関係であることを議論している間に
ダウンロードは終わった。
グーグルは、つねに古い球状地図をインターネットユーザに与えている。
最後の民主主義は同時性を求めるだろう。
しかし、リアルタイムは最後の帝国になりうる。
<現在>はすでに限りなく奪われているから
<明室(Light Room)>で限りなく過去を現像できる。
私は、私が生まれる以前の過去の現像も編集も無限に自由だ。 Y.K
明室作業
毎週かつての暗室でフィルム現像を手伝っている。
視力と体力の衰えた彼には化学反応の管理が厳しい暗室作業が
もはや困難となったからであるが、
最近のデジタル技術では暗室は不要だ。
このあたらしい明室作業(Light Room)は、彼を虜にした。
彼は明るい窓際でいつでも作業を中止できる。
長く保存状態が悪化したまま放置され、
なかば諦めかけていたネガフィルムのデジタル現像が始まった。
ひどく損傷を受け光学的な現像処理では回復不可能と思えた無数のフィルムが、鮮やかにフィルムスキャナーとデジタル補正技術で蘇った時の彼の驚きは名状しがたい。
いったいフィルムにはどれほどの情報が記録されているのだろうか。
モニターに魅入っていた彼は、その瞬間「すばらしい!!」と叫んだ。
私は生まれて初めて彼からその言葉を聞いた。
広島弁が達者な人にはもっとも似つかわしくなかった言動以上に、
それは写真の歴史と概念を塗り替える決定的な事件であった。
デジタル現像では暗室でのフィルム現像と引き延ばし操作が同時にできる。
そして彼はその瞬間に紙焼き技術では不可能な表現技術を
即座に見抜いていたのである。
そこには戦後の時系列的な風景画のドキュメントではなく、
明晰な表現者の視点が再生されていた。
彼は記憶の再生と共にエネルギーに満ちていた。
半世紀ぶりに映像化されるこれらのすべてのネガフィルムに関する
正確な場所と当時の気候や時間、そして使用したカメラとレンズなどの
メタデータの記憶とキーワードタグは88歳の老人とは思えない。
原爆ドームの熱で歪んだ鉄骨の頂部から見下ろした
夕暮れのスラム街に投射される自らの陰鬱なシルエットは
彼の30歳代の代表作の一つになるだろう。
初めて映像化される半世紀前のアーカイブは
老写真家の初めての個展となるに違いない。
私は直ちにこの写真家のアシスタントとして
数万枚のスキャンに耐える高性能なフィルムスキャナーを注文した。
そして、彼のスタジオまでの往復300キロのドライブのために
ipodのFM用のトランスミッターを購入した。
これらのすべてのプロセスは
私にとっては親子関係を超えた明室作業だ。 Y.K
圏外
冷戦は終わった。
しかし、人類の三分の一は、社会主義が支配する圏外に住んでいる。
自由主義経済圏が軍備を強化することを止める理由はどこにもない。 Y.K
緑の砂漠
日本が杉だらけになった理由はそれほど知られていない。
杉を植えさせたのは当時の農林省の補助金による林業政策であるが、
広葉樹林を破壊すれば、稲作が肥料と農薬に依存することが半世紀の
アメリカ合衆国にはわかっていた。
稲作には大量の水が必要だ。
米1トンを収穫するまでには30トンの新鮮な水が必要だ。
杉のような人工林の大量植林は在来の動植物をおびやかすばかりか、
水資源を枯らしてしまう。
それは、ヒロシマの原爆以上の破壊効果があった。
実際、薄暗い緑の砂漠と化した。
こうして、世界中で排除が最も困難な生態的システムは、
見えないアメリカ合衆国である。 Y.K
小さな太陽
普通にこだわらないと思っている人ほど、
かけがえのない人生を過ごしていると信じているだろう。
元素が絶えず生命によって入れ替わるプロセスは、
かけがえのない人生を楽しむよりも
かけかえられる人生を喜ぶ秘訣を暗示している。
元はと言えば、他の天体のエントロピー的廃棄物だ。
スティーヴン・オカザキ監督のドキュメンタリー「ヒロシマナガサキ」の
生き延びた証言者たちの現実は、この惑星内部の小さな近すぎる太陽によって
かけかえられた普通の人たちの人生だ。
イデオロギーが核を持つ根拠を肯定するかぎり、
元素が絶えず生命によって
自発的にかけかわるプロセスは否定されている。 Y.K