太陽や惑星の質量は知っているが
動かない建築空間の質量に対して
建築家は無関心である。
空間構造物の全自重を大地に流す仕事から
軽量化は生まれない。
彼らが大地を重力の下水道のように使うかぎり。
「テンセグリティ」カテゴリーアーカイブ
非鏡像的な相補性
すべての圧縮材は惑星地球から調達されてきた。
それゆえに、圧縮力は大地との結合を必要としている。
張力は惑星地球以外とのしかも
距離を超越した関係を含んでいる。
それゆえに、張力は圧縮力を統合できるが
単独では存在できないのである。
テンセグリティの張力は
非鏡像的に異なった圧縮力との関係においてのみ
相補的に存在しうるのだ。
概念の牢獄
驚くには及ばない。
テンセグリティ原理が発見されるまで
圧縮力と張力の分離は
<構造とパターン>を問わず
いずれも構造の破壊行為とみなされていた。
概念の牢獄は思考方法からではなく
言語から始まっている。
「宇宙には<固体>は存在しない」RBF
柔軟な強度
テンセグリティは
過去数千年間の固定的なエンジニアリングに対して
衝撃的な動的エンジニアリングを形成してきた。
圧縮材が不連続な構造として認識されるまでに半世紀を必要としたが、
実際にはテンセグリティが受ける外力の衝撃に耐える
<柔軟な強度>のほうがもっと衝撃的である。
バックミンスター・フラーレンがダイアモンドよりも
堅くそして柔軟であるように。
このテンセグリティの宇宙的な汎用性を認識するまでには
さらに数十年間かかるだろう。
構造の英知について
数多くの構造部材から
一個の全体にまとめあげることによって
テンセグリティは生まれなかった。
構造の英知は、圧縮力の固有性からの逸脱から生まれている。
圧縮材を連続させない原理の発見は
中心的な支柱の排除から始まったのである。
テンセグリティ構造ほど
圧縮材を断片化した可視的な構造は存在しない。
真の構造の強度は
中心的な支柱の排除から始まったのである。
動的秩序
揺れ動く社会を忌み嫌い
静的な固体的な安定を求める願望こそは
無秩序の原因なのである。
テンセグリティの構造安定性を形成する
振動こそは
グランチが忌み嫌う動的秩序なのである。
より重要な部分を何一つ存在させないその秩序は
防御すべき中心をけっして所有しない。
テンセグリティは
本質的にアナーキー(an-archi=主たる存在がない)である。
張力的飛躍
自重で変形しているのが分かる
ゴム紐や釣糸を使ったテンセグリティが、
美しく見えることはない。
最適な張力を利用した
構造には飛躍がある。
科学的に飛躍したテンセグリティは
制作可能であるが
大きさにかかわらず
ほとんど存在していないのは
不完全なエンジニアリングではなく
メタフィジックスの欠如からだ。
内部と外部の分離について
テンセグリティを
幾何学モデルに閉じ込めるよりも
球状大気圏をモバイルする包括的テクノロジーとして
複製すべきである。
そうすれば、
内部と外部を分離するための
メタフィジックスが
自然に芽生えてくるだろう。
振動について
光合成生物が
光エネルギーを使って
水と空気中の二酸化炭素から炭水化物を合成しているように、
テンセグリティは
風や雪や雨といった外部からのエネルギーを
張力によって<より分散してより統合する>非有機的生命である。
<分割して統治する方法>は
外部からシステムを変容または破壊する方法であるが
<より分散してより統合する方法>は
システムを通過する外部エネルギーが
そのシステムをより統合する方法である。
共鳴現象は無生物の統合過程にも現れる。
より細く、より強い方法について
球の表面積に対して
より小さく分割して頂点数を増加して強度と剛性を
シナジー的に増大させる方法が
ジオデシックの振動数=分割数(frequency)の原理である。
より細い繊維状の炭素繊維が
最強の張力材を形成する場合は
同じ直径の張力材では
張力材の表面積が増大するほど
張力がシナジー的に増大する原理を利用している。
すべての張力が物質の表面に現れ
ついに張力をその表面から離脱させるテクノロジーこそ
ジオデシック・テンセグリティだ。