しかし、もう一つの工学的な原因については
ほとんど理解されていない。
張力がゴム紐や釣糸などの不適切な弾性によって
2点間距離がつねに変動して
その振動数をほとんど吸収している。
張力材には弾性率の高い物質が望ましい。
(註:弾性率の高い物質ほど変形しにくい)
自動車ならかなり危険な
サスペンションシステムになるだろう。
フィジカルな原因からも
テンセグリティの非共鳴状態が
生成される。
「テンセグリティ」カテゴリーアーカイブ
共鳴について
テンセグリティに
振動していない瞬間は存在しない。
テンセグリティは
つねに環境と共鳴している。
その振動とその音に気がつき難いのは
われわれの感覚器の限界を超えた振動数だからではなく
感覚器自体がつねに自己のざわめきで
振動しているからである。
脱獄用シェルター
テンセグリティは
固体的概念のすべてを否定し去った時に誕生した。
つまり構造の定義はテンセグリティよりも前には存在しなかった。
航空機よりも半世紀遅れて
不動の大地への依存から解放された
空間構造が発見されて約70年が経過した。
通勤や通学という概念には
土地資本主義による不動産の所有化が含まれているように
モバイル可能なシェルターには
固体的概念からの脱獄化が含まれている。
大陸さえもテンセグリティのように
互いに振動しながら
球状に移動しているのである。
現状維持について
非有機的生命である
テンセグリティの現状維持とは
共鳴することである。
——-隔たった部分をより統合するために。
怖れや不安があっても
人間には様々な幻想が与えられ
互いに震えないように
全体から分断されている。
人間の現状維持とは
無知をより不連続化することである。
優れた張力機能
テンセグリティの張力が
優れたネットワークを形成する時
より劣った局所的な張力部材と
平等になりたいのではなく
より高い張力部材から張力を分散するように
機能することにある。
局所的な張力部材が破断しても
補償作用が機能することに関係している。
大気圏の内部化
マルセル・デュシャンの『パリの空気50cc』 (Air de Paris) (1919年)
よりもはやく大気圏を内部化した人間はいない。
「パリの空気」は芸術作品であるが
内部化された空気のなかに住み続けるには工学が必要だ。
もっとも少ない材料で短時間に
組立と分解を反復して
移動するための『地球の空気』は
テンセグリティ・モバイルシェルター(2008年 by Yasushi Kajikawa)
によって内部化される。
続)テンセグリティモデル
彼はテンセグリティ原理の発見者でも
構造の定義をした構造家でもない。
テンセグリティ(tensegrity)という名前の
命名者でもない。
非連続な圧縮材のテンセグリティの
最初の制作者でもない。
カリフォルニアで2度目に移転したばかりの
バックミンスター・フラー研究所の所有する
膨大なインデックス作業中のクロノファイルで1週間を過ごした時、
テンセグリティに関するフラーとケネス・スネルソンとの
数回にわたる往復書簡を見つけた。
これらは、私がその書簡を慎重に精読した時の私の感想ではなく
両者がその手紙で了解した事項である。
バックミンスター・フラーが亡くなってからの
ケネス・スネルソンの上記の了解事項を無視した言動から
その手紙の公開こそ、テンセグリティの歴史的起源を決定づけるものである。
美的なテンセグリティ構造のデザイナーは
21世紀の個人の生存空間には関係しない。
テンセグリティモデル
間違った理論があるように
間違ったモデルは存在する。
間違ったテンセグリティモデルは
床の上で何度もバウンドするかしないかで
見分けられる。
ケネス・スネルソンの工学は衰退している。
固有安全性はテンセグリティ構造から
すっかり排除されてきた。
一本のテンション材が破断すると
彼の彫刻作品の美だけではなく
構造さえも破壊されるようにデザインしている。
続)モデル言語とシナジェティクス
新しい概念に出会うために、
その概念を構成する言語を壊すことから始めるなら
新しい概念に出会う最大のチャンスがやってくるように
新しいシナジェティクスモデルに出会うために
そのモデルを構成する概念を壊すことから始めるなら
新しい言語に出会う最大のチャンスがやってくる。
モデル言語もまた
新たな言語形式を産出する生得的能力による
非物質化なのである。
それゆえに、シナジェティクスモデルは
具体性に置き換えられた存在ではない。
例えば
バッキーボールがテンセグリティに置き換えられる前に
テンセグリティが発見されていた事実を
説明できないだろう。
続)構造について
構造の原理の発見者が
建築家であることは稀である。
建築(Architect)は、 構造ではなく
支配(arch)の歴史である。
支配(arch)は階級組織(hierarchy)を形成する。
支配(arch)は圧縮の歴史である。
そして、反建築とは、無政府(an-archy)を意味する。
構造を安定化させる原理は
本質的に無秩序(anarchic=支配のない状態)
から発見されてきた。