デザインサイエンス」カテゴリーアーカイブ

面が存在しないテンセグリティは多面体ではない

「宇宙に固体は存在しない」(フラー)という認識から
テンセグリティ原理が発見された。
面が存在しないテンセグリティは多面体ではない。
圧縮材と張力材との合金であり、
合金を構成する元素は金属元素とは限らない。
宇宙の合金はつねに振動し、より高い固有振動数によって
相互により結合する。

テンセグリティ・トラス構造 1961 バックミンスター・フラー
自律するテンセグリティ・モジュール
module

法則性がないランダムという無作為

科学はランダムな要素という概念によって、
主観的な出来事を人生における刺激的だが
不注意なランダムな経験として捉える。
明確な目的のない経験をより排除しても,
客観的な出来事は認識できない。
主観どうしが化学反応を起こして
予測できない全体を垣間見る経験を
他の出来事から見分けられるかだ。

「ランダム再生」を選択する行為は、真の「無作為」を再生しない。

他者の自由度を減らすことなく他者の生存に役立つ構造デザイン

鯨を捕獲するための狩猟用カヤックは、
防水性に富んだアザラシの毛皮コートを
転覆しても沈まないように
船体デッキを覆うまで存在していない。
他者の自由度を減らすことなく、
他者の生存に役立つ構造が存続しえるかを考察する時に
構造デザインは初めて生存段階の有用性からリセットされる。

狩猟用カヤック
狩猟用カヤックは、荒波で沈没する危険を減らすために
クローズドデッキのデザインで構造を進化させた。
構造的には獣皮ボート(skin boat)

自然の原型は外側からではなく内側から

発見されたシナジェティクスが
直ちに人間の意識を変容することはほとんどない。
継承された数学幾何学的概念が
その意識を規定していることが
観察者のシナジェティクスの発見を阻んでいる。
自然の原型は集団的に概念化される前に
観察者の外側からではなく内側からもたらされる。

内部と外部は相補的で変換可能
SYNERGETICS RBF 1975
Fig. 1032.31 Concave Octahedra and Concave Vector Equilibria
Define Spherical Voids and Energy Trajectories:
“Concave octahedra” and “concave vector equilibria”
pack together to define the voids of an array of close-packed spheres

教育された分類と分割の癖

Truth is completely spontaneous. Lies have to be taught.
バックミンスター・フラー

デスクトップから離れて探査するだけでは、
完全に自発的な発見には遭遇できないだろう。
教育された分類と分割の癖は
全体から目を反らすばかり。

部分には非対称性があるが、
全体には対称性が形成される
シナジェティクスモデルは
教育された「分類と分割の癖」を破壊しなければ
発見できない。
またそれを再現する制作も困難だ。

SYNERGETICS RBF 1975
Fig. 458.12 Folding of Great Circles into the Icosahedron System:
The 15 great circles of the icosahedron folded into “multi-bow-ties”
consisting of four tetrahedrons each.
Four times 15 equals 60, which is 1/2 the number of triangles on the sphere.
Sixty additional triangles inadvertently appear,
revealing the 120 identical (although right- and left- handed) spherical triangles,
which are the maximum number of like units
that may be used to subdivide the sphere.

シナジェティクスの脱・方法序説

バックミンスター・フラーが、幾何学研究者であったことは一度もない。
シナジェティクスは幾何学からは始まらなかった。
学者の考えの寄せ集めによる学習よりも
探査によって経験された事実から
秩序を発見していく峻烈な操作主義によって
初めてシナジェティクスが形成されていく。
シナジェティクスはシナジェティクスを分割して分類しない。
この包括性の探査方法は、他に類を見ない脱・方法序説となる。

バックミンスター・フラーのシナジェティクス
脱・方法序説 intuition=cosmic fishing

無人グライダーの超軽量の翼とその生産工場

植物が自らの種子を全方向により遠方に
空輸する超軽量の無人グライダーの翼は、
螺旋状に飛行して滞空時間を延ばして
より高度を上げるチャンスを得るために
僅かに左右非対称にデザインされる。
それらは球状正四面体の果実の内部空間に
予め対称的にパッケージされ、さらに、
この強固な格納庫は無数のグライダーの生産工場を兼ねる。
かつて森に移動して群れで生存した植物は、
森から離脱するために、遂に飛行する機能を獲得した。

ハネフクベ(Alsomitra macrocarpa)(Wiki)
熟して割れた果実からグライダー状の羽根を付けた種子が落下・飛散する

テンセグリティはモバイル生活器の元型

バックミンスターフラー研究所の
60トンものクロノファイルを検証した時、
驚くことに、テンセグリティ概念の発見とそのモデルに
ケネス・スネルソンはまったく関与していない事実が分かった。
彼がフラー独自のテンセグリティ概念を使用したこと以上に
その原理を構造として開発していないのだ。
つまり、美的価値に絶えず惹かれて
古典的表現様式へ固執する行為こそ
反シナジェティクスであり、
シナジェティクスの発展に貢献したとは考えにくい。

スネルソンが自分芸術作品に対して、
フラーのテンセグリティ以外の名称を考案していない事実は、
独創的な表現様式へ固執する行為にも反する。

テンセグリティ構造は、人類のためのモバイル生活器である。
展開型テンセグリティ構造 直径11mの縮小モデル図面  
制作 シナジェティクス研究所 梶川 泰司
バックミンスター・フラー生誕100年祭 1995 ニューヨークで展示

「基礎と応用」という自然に対する最初の細分化

失敗というドン詰まりの繰り返しの過程にこそ
予測できない発見が待ち伏せしている科学史が存在する。
「失敗の神秘」を遠ざける「失敗を繰り返さない勉強」の教育的支配が
「基礎と応用」という自然に対する細分化を生む。

宇宙で最も豊富な水素原子が他の原子の基礎ではないように
どんな部分からも全体を推測しないシナジェティクスに
「基礎と応用」は存在しない。

この木の根は、すでに自然を細分化した専門性の概念から形成されている。
この図は「自然の木」を意味しない、ただのツリー構造だ。
http://www.appchem.t.u-tokyo.ac.jp/kyouyou.html

自己を模倣しないシナジェティクス

ベクトル平衡体の発見は
ジターバッグの発見よりも17年も先行し、
テンセグリティの発見は
ジオデシックスの球面分割理論とその実践よりも22年先行した。
原理の相互関係の理解の順序は重要でないが、
シナジェティクスの起源には無数の驚くべき事実がある。
シナジーによって未知を内包していくシナジェティクスは
発見・発明における自己を模倣しない
R.B.フラーの「Total thinking」によって半世紀間も練り上げられた。

SYNERGETICS RBF 1975
Fig. 413.01 Vector Equilibrium:
Omnidirectional Closest Packing Around a Nucleus: