ヒロシマノート」カテゴリーアーカイブ

非同時的な疎開

学校には
集団で同時的に通学してきた。
会社には
集団で同時的に通勤してきた。
しかし、
被曝した後に
個別に疎開させられるほど
不幸なことはない。
被曝疎開は
ゆっくり死んでいくひとびとを
非同時的に隠蔽するための
放射性物質の拡散方法になった。

ウラニウムという自然

原子核を壊してエネルギーを取り出す
電力会社が所有するテクノロジーからは
壊れた原子核を元に戻すことはできない。
ウラニウムは核分裂からは生成できない。
重い恒星の超新星爆発によってのみ生成されてきた。
バイオスフィア内では誰も再生できない
ウラニウムという自然を
壊す権利は老いた恒星にもない。

放射性

苦しみからの逃避によって
自由からの逃避を加速させ
すべての愛を引き裂くエネルギーは
放射性物質からだけではない。
とどまることなく
常に変移している
無関心からだ。

不在

ガンの危険性を我慢させる人たちが
子どもを被曝させている。
その危険性を我慢する人たちも
子どもを被曝させている。
不幸の不在を
共有しようとしている。

再生原理

細胞は都市のように復興できない。
ダメージを修復できない場合は
ダメージを再生するのみである。
細胞が修復できな場所に
都市は復興できない。

流離う

利権が羅針で、欲望が支配するまま
多くの理性も被曝している。
かすかな英知とは
被曝奴隷よりも
自ら被曝難民になって
流離う自由だ。
分子の不規則な衝突によって引き起こされる
ブラウン運動のように
最小限の個体の
自然なふるまいに回帰できる。